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【山口屋 鶴岡和美さん】書道教室が居心地のよい拠り所に

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日貫小学校の目と鼻の先にある「山口屋薬店」。医薬品だけでなく、文房具や日用品なども取り扱っているお店です。

このお店の1階では、店主である鶴岡和美先生の書道教室が開かれています。

今年で22年目になる書道教室には、今も地区内外から通いにくる人が絶えません。

その最大の理由は、鶴岡さんの人柄が作り出す「居心地のよさ」にありました。

今回は、鶴岡さんと書道教室の魅力に迫ります。

はじまりは保護者の声から

鶴岡さんが書道教室を始めたのは、平成14年のこと。

日貫小学校の保護者から「子どもたちに習字を教えてほしい」との要望があったのがきっかけです。

それまで各地で書道を習っておられた鶴岡さんでしたが、最初は「自分に教えられるだろうか」と引き受けるのをとても悩んだそうです。

「私も自信がなかったから、当時の先生に相談してね。そしたら『教えることは自分の勉強にもなるからやりなさい』と背中を押されて。それで始めることにしたんですよ」

当時、場所の候補には公民館が挙がっていました。しかし、畳やふすまが墨で汚れるのが気になり、自身のお店の1階部分を教室用にしつらえたとのこと。

「当時は子どもばかりで、大人は1人だけでした。子どもたちは顔見知りだから『おばちゃん、おばちゃん』って呼ぶんですよ。私もいきなり先生と呼ばれるのに慣れなくてね、親御さんには内緒で、おばちゃんでええよ、と言っていたこともありました」

日貫ではたいていの人が顔見知りなので、子どもたちと言えど、ご近所さん方にいきなり先生と呼ばれるのは気恥ずかしさがあったそう。

部屋を見渡せば、柱や床に付いた数々の墨の跡。当時の賑やかな雰囲気がうかがえます。

おけいこのなかで大切にしていること

壁際には生徒たちの作品がズラリと並ぶ。

書道だけでなく、華道・茶道の先生としても活躍されている鶴岡さん。

生け花は大人向けに、お茶は公民館や保育園へ出向いて子どもたちに教えています。

様々なおけいこを通して、鶴岡さんが伝えたいことを聞きました。

「やはり日本の伝統文化を伝えていきたいというのが一番。例えば書道でいうと、なんぼ文字を書かんで済む時代がきても、筆文字を書くことは日本人として大事なことじゃないかなと思いますよ」

また、こんな話もしてくださいました。

「作法がどうのこうのというよりは、体験してもらうだけでいいんです。小さいときに体験していることは、きっと大人になっても心に残っている。筆のやわらかい感触が心に残っていて、また習いに来ましたという大人の人も多いんですよ」

日本文化を身近に感じて、気軽に体験してほしいと話す鶴岡さん。

私たちが日本文化と聞いてイメージするような堅苦しさを感じさせないのが、鶴岡さんの教室の魅力。親しみやすいことが人々の心を掴むのかもしれません。

交流の場としての役割

書道教室でのやりとりからは、子どもたちの字を褒める声かけが多く聞こえてきました。

「元気よく書けたねえ」

「この字はすばらしいね。いい調子だよ」

「あとここだけこうしてみようか」

形にとらわれすぎず、とにかく書くことを楽しんでもらいたい。そんな鶴岡さんの思いが垣間見えます。

1時間ほど経ったころ、コーヒー(や紅茶)とお菓子が運ばれてきました。「ちょっと休憩しましょう」と鶴岡さん。

大人の生徒が増えた今、休憩のコーヒータイムが定着したといいます。

筆を置いて一息つく人、コーヒー片手に黙々と書き続ける人、ささやかな談笑を楽しむ人と、この時間の過ごし方は人それぞれ。

鶴岡さんも話に参加して、和気あいあいとしたひとときが過ぎます。

しばらくして少し場が落ち着くと、また各々が書き始め、一貫して穏やかな空気が続いていました。

おわりに

取材を通して習字教室は、地域の人の交流の場にもなっていることが分かりました。

面と向かって話す必要がないため、気負わず自然体でいられるのも魅力のひとつ。

家でもない、職場や学校でもない、もうひとつの居場所。ある意味、拠り所としての一端を担っているともいえます。

書道本来の奥深さや面白さはもちろんのこと、鶴岡さんの人柄によって居心地のよさを増している書道教室。

これからも長く続いて欲しいと願っています。


ライターS
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ひぬいっこ
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日貫生まれ・日貫育ちのライターSです。日貫の情報をのんびりゆるりと発信していきます。

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